若い勤務医は病院を定期的に変えた方が良い?
医学部を卒業して医師免許取得後、大抵の人は臨床研修医となるでしょう。2年間の臨床研修が終了すると、いよいよ就職先を決めることになります。20年前は卒業前に就職先の医局(病院)を決めて、医師免許取得と同時に専門医教育が始まっていました。現在のシステムの方が、職場選びの自由度も高いように感じます。そして最近の研修医の先生たちは人生をよく考えていると感じます。
さて、そんな自由な時代ですので、臨床研修後は医局に入局せずに、いきなり病院に就職する若い先生達が、私たちの時代に比べ圧倒的に増えたと感じます。研修医の先生に1年ごとに、医局の人事で1年ごとに異動していた経験を話すと、皆一様に驚きます(というかあきれ顔)。今にして思えば、まるで「医局」という人材派遣会社に就職したようなものです。しかし、今では、臨床研修終了後、10年以上同じ病院に勤務している先生も少なくないようです。
ジプシ医 生活
1年ごとに異動するジプシーのような生活を送るのと、10年間一つの病院で過ごすのと、どちらの生活を選びますか?と問われれば、誰しも後者を選ぶのではないでしょうか。ジプシー生活は第一に、経済的にも損失が大きいです。引っ越し代、敷金・礼金(当時はそれぞれ2ヶ月分が一般的でした)だけでも一財産です。そして第二に、異動の度に人間関係を一から構築しなければならないのは精神的負担も大きいです。中には全然気にしない先生もいるようですが、私はとても苦しかったです。正直4月が嫌いでした。
ただ、そんなジプシー生活で得られるものも多かったと思います。色々なボスの下で働くことで、異なる治療方針や、考え方、手技など広く学ぶことが出来ます。いくら有名なボスでも、ずっと同じ先生の元に居続けるよりは、色々な先生の元で様々な流儀を身につけた方が、医師としてのスキルが増すと思います。そしてその経験は重症例を目の前にしたときや、緊急時に生きてきます。
勘違い先生は出世魚?
逆に、ずっと同じ病院に居続けると、居心地が良くなって、天狗になってしまう「勘違い先生」を目にすることがあります。勘違い先生がさらに進化すると、自分より年次が上の先生が赴任してきても、先輩風を吹かせたり、他科の先生にも横柄な態度を取るようになり「痛い先生」に進化します。この辺からirreversibleになってくるので、もはや手遅れです。医師としてのスキルが優れていれば周りも納得するのですが、「自分は偉い」という幻想にとりつかれ、努力や勉強もしなくなるので、周りからは白い目で見られ続けることになり、最終形態「唯我独尊先生」に進化します。こうなると他の病院へ異動したときには適応できないのは明白です。本人もだんだんとそのことに気付くのか、その病院にしがみつく様になりますます。痛さの極みといえます。
若い頃は色々な病院の空気を吸おう
医局に属すれば否が応でも人事で異動しますので、鼻が伸びても異動先で折ってもらえますので安心ですが、病院に就職した場合は若い頃は、定期的に、国内留学するなど他施設の空気も吸ってみることが成長に繋がるのではないかと思います。私の医局時代の先輩が「ストレスなく働けるようになったらやばい、何らかのストレスを感じながら働くくらいが丁度良い」言っていました。研修医の頃でしたので今ひとつピンときませんでしたが、医師になって10年位した頃からその意味が分かるようになりました。
実るほど頭を垂れる稲穂かな(自戒の念も込めて)